iPS細胞の作り方(意外と知られていないその仕組み)
当ブログは完全未経験からプログラマーを目指す人のためのブログです
最近、プログラミング関連の記事しか書いていませんでしたが、ぼくはこれでも一応、大学院の頃は生物系の研究者でした。
なので、今回はちょっと志向を変えて、iPS細胞について語ってみたいと思います。
近年、再生医療の世界ではiPS細胞がかなり注目を集めていますが、なぜここまで有名になっているのかご存知ですか?
それは、どの細胞にも変化することができる万能性を持っているからではありません。
実は、iPS細胞がもつ大きなメリットは
- 移植した際に拒絶反応が起こりにくい
- 作製する工程に倫理的な問題がない
ということにあるのです。
そのため、再生医療において、とても有効な細胞として認識されるようになりました。
とはいっても、みんな注目するのはiPS細胞の持つメリットばっかりで、その作り方に関しては知らない人が多いですよね。
ぼく個人としては、「どうやってiPS細胞が発見されたのか?」ということを知っているほうが、今後、色んなニュースを見ても楽しいんじゃないかと思うので、その作り方について詳しくご説明したいと思います。
その工程を知ることができれば、「なぜ拒絶反応が起こりにくいのか?なぜ倫理的な問題がないのか?」という部分も理解できるようになりますよ。
iPS細胞が発見された経緯
iPS細胞は以下の経緯で発見されました。
- 万能性を持つために必要だと予想される24個の遺伝子を選別
- 全ての遺伝子を同時にマウスの皮膚細胞に導入する
- マウスの皮膚細胞が万能性を持つことを確認
- 24個の遺伝子から万能性に関係ない遺伝子を選別する
- 抜いてしまうと万能性がなくなる遺伝子を特定
- 万能性に必要なのは「Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc」という4つの遺伝子だということが分かる
つまり、体細胞が万能性を持つためには、「Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc」という4つの遺伝子が必要だということですね。
この4つの遺伝子が導入されて初めて、iPS細胞となるわけです。
ちなみに、「iPS細胞」という名前は
induced(人工)
Pluripotent(多能性)
Stem(幹)
Cell(細胞)
の頭文字から来ています。
日本語にすると、人工多能性幹細胞ということですね。
この名前のなかにある「幹細胞」も、実は他の細胞とは違う面白い特徴があるのですが、それについては次回に回すことにします。
それでは次に、細胞が万能性を獲得するために必要な4つの遺伝子に関して見ていきましょう。
万能性を獲得するために必要な4つの遺伝子の正体
「iPS細胞が発見された経緯」の中で「Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc」が、細胞の万能性を上げるために必要な4つの遺伝子だとお話ししました。
では、これらの遺伝子は細胞内ではどういう働きをするのでしょうか?
4つの遺伝子の働き
4つの遺伝子が機能すると、それぞれの遺伝子に対応した「転写因子」というタンパク質が合成されます。
この転写因子は遺伝子の働きを調節するもので、それによって細胞が万能性を獲得するために必要な条件が細胞内で作られるのです。
体細胞への遺伝子の導入↓
体細胞内で各遺伝子の転写因子が機能↓
つまり、万能性を持っていない細胞に「Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc」という遺伝子を導入することによって、それぞれに対応する転写因子が生み出され、その転写因子の働きによって万能性を獲得したiPS細胞ができるということです。
同じく万能性を持つ「ES細胞」との違い
iPS細胞のほかに、万能性を持つ細胞としてES細胞というものがあります。
しかし、現在ではES細胞よりも圧倒的にiPS細胞の方が有名ですよね。
同じ万能性を持っている細胞なのにもかかわらず、どうしてここまで知名度が違うのでしょう?
それは、ES細胞が受精卵から作成されるため、倫理的な問題があるからなのです。
そのため、現在では、倫理的問題がないiPS細胞の方が再生医療において注目されるようになりました。
ES細胞の作製方法
ES細胞は、受精卵をもとにして作られます。
私たちも元は、たった一つの細胞である「受精卵」から成長し、目・手・足など体の色んなパーツが出来上がってきました。
つまり、受精卵は万能性をもった細胞だということですね。
その受精卵を利用し、万能性を持ちながらも培養して半永久的に増やせるようにしたのがES細胞というわけです。
しかし、ES細胞を作るには受精卵を壊さなければいけません。
つまり、一つの命を奪うのと同じだということですね。
この点が倫理的に問題となり、再生医療においてはES細胞よりもiPS細胞の方が利用されるようになったのです。
まとめ:iPS細胞は利用するメリットが大きい
まとめると、iPS細胞を再生医療に利用するメリットは
- 万能性を持っている
- 自分の細胞から作るため拒絶反応が起こりにくい
- 安定的に供給できる
- 倫理上の問題もない
となっています。
そして、そのiPS細胞は
- Oct3/4
- Sox2
- Klf4
- c-Myc
という4つの遺伝子を体細胞に導入するだけで作製することができるのでした。
意外と知らないiPS細胞の作り方、ぜひもっと深く学んでみてください。
好奇心が止まらなくなりますよ。